ITCで広がる世界

ITコーディネータ 玉野 聖子

■起業前はPC インストラクター

 はじめまして。四国愛媛でITC として活動をしております玉野です。

というよりは、ここ3 年ほどITC カンファレンスで司会をしている玉野です。と言うほうがピンとくる方もいらっしゃるかもしれません。ITC としてカンファレンスの司会を担当させていただくことは大変光栄なことで、毎年の登壇の方々の素晴らしいお話や、全国からお集りのITCの皆さんとお会いして、あらためてITC ってスゴイと感じております。今回は司会系ITCでの寄稿でなく、独立のキーポイントということですので、ITCとしては異色かもしれない私のこれまでを振り返ってみます。

 

 実は大学を卒業して放送局に就職しましたので、話すことは本職です。

 

 その後、結婚のため退職し2人の娘にも恵まれて、専業主婦として家庭に入っておりました。当時、ちょうど子育て最中にWindows95 の発売で世間が賑わっているというニュースを、何か新しいゲームソフトが出たのだろうというくらいの認識しかないパソコンと無縁の主婦でした。

 

 しかし私たちはバブル後半世代で、女性も仕事を持って働きなさいという世の中の動きと、子供は母親がしっかり育てなさいという世間の声との狭間の辛さも感じていました。私も玉野さんの奥さん、〇〇ちゃんのお母さんというだけの自分に焦りを覚え、何か仕事をしようと探したのですが、求職時にパソコン操作ができないと何の仕事にも就けないことに衝撃を受けました。まずはパソコンができるようになってから仕事を探そうと、地元のパソコンスクールでWindows 初級講座に申込み、パソコンの電源を入れたのは32 歳。今でも、その日のことはよく覚えています。知らなかったことを知る喜びは、何歳になってもあるのだと感激しました。

 

 それからパソコン教室に通いつめ、翌月のExcel 3級取得をスタートに、気が付くと3 年間で25 以上のOffice 系の資格を取得していました。その間に、教室からのお誘いを受けてパソコンインストラクターとして伝える側にもなりました。せっかくならインストラクションをしっかり学ぼうと旧Microsoft のMOT(現在ではMCT)資格を取得後、大学での授業や求職者のパソコン訓練などを通して、実際に実務で使えるために何を身に付けておかなければならないのか。ということを意識して伝えておりました。

 

 そんな時、ひょんなことでお誘いいただきOffice 系の書籍の執筆をすることになり、2年間でExcel、Word、Access など計6 冊の執筆やライター養成に関わりました。書籍を執筆することは、とてもエネルギーのいることですが、自分の本が書店に並んでいるのを見るのは、格別の喜びです。この頃、日中はインストラクター、夕方は母親業、夜は執筆と目が回る忙しさでしたが、充実した毎日でした。

■起業とITC との出会い

 再就職訓練に関わることでキャリアコンサルタントの資格も取り、忙しくしている30 代後半「そんなに頑張っているのだったら会社にしたら」というアドバイスもあり、2008年5月に株式会社エンカレッジを設立しました。エンカレッジというのは励ます、勇気づけるという意味です。当時の自分を振返ってみると、

 

【すぐにできたもの】

 会社(印鑑を作って行政書士さんにお願いすればよかった)

 

【創業時になかったもの】

 会社設立後の運営のビジョン、経営計画、会社経営に関する知識

 

【創業時にあったもの】

 根拠のない自信と行動力という状態でした。勢いで作った会社でしたので、当然、すぐに困ります。

困った私は、地元の商工会に相談に行き、専門家にアドバイスをもらい、何とか方針を決め、事業を続けることができました。

 

 商品や在庫を持たない仕事でしたので、始めは自宅開業でしたが、拠点を持って仕事をすることも必要と思い、えひめ産業振興財団のインキュベートルームに入居しました。

 

 その中で多くの専門家の方に支援していただき、ドメインを明確にしたり、自社を客観的に分析したり、事業計画を立てたり、果ては法的なところを踏まえての契約書の作り方なども教わりました。お世話になった専門家の方たちは、創業後3 年間で7名いらっしゃいました。しばらくして7 名の方は、全員ITCの方という事を知り、ITCに興味を持つことになりました。

 

 支援していただいたITCの方たちのように、しっかりと自分の会社を考えてみたい、という思いでケース研修を申し込み、2011 年に受講し、その年のクリスマスに認定通知をいただきました。受験に関しては協会の合格体験記でも紹介していただいています。ケース研修の同期は、年齢も職種も様々でしたが、今でも大切な同期の仲間です。

 

 その後ITCになったことで、かつて自分がお世話になったように、自分の得意な部分で専門家として事業所の支援を行うようになりました。また月に1 回は、えひめ産業振興財団が行っている女性創業サロンの相談員として、自分の体験を踏まえて起業したいという女性の相談に乗ることもあります。

■ ITC としての現在の仕事

 弊社は実務に使うOffice 系の操作指導を行うこともありますが、基本は教育研修の会社です。地元のクライアント様との長いお付き合いの中では経営陣の悩みを聞くことも多く、的確なアドバイスや支援のためにITC の学びがとても役に立っています。

 

 また4 年前から地元の大学でインターンシップに関する通年の授業も担当しており、日頃、大学で学生と接している関係で、学生が社会人となるための架け橋のような役割も担っています。最近、実感するのは若者のパソコン離れ。スマートフォンやタブレットでのタッチパネル操作に慣れているのだけれど、マウス操作は苦手、というよりマウスに触ったことがないという学生もいます。世の中の流れはAI を使って業務を効率化するということかもしれませんが、地方の現場では、依然として人手が必要です。そんな時に活躍できる人材になるようにIT リテラシーの向上も含め、育成指導の手伝いもしています。

 

 そして2010 年1 月から地元の経済誌にコラムを執筆しており、2017 年3 月までは「パソコンコラムAtoZ」というタイトルで地元の中小企業の方たちに向けてIT リテラシー向上をテーマにした情報をお届けしていました。2017年4月からは「人が育つ現場から」として人材育成や現在のIT の流れなどをご紹介しています。隔週ですが現時点で9年間、184号まで続いています。

 

 まだまだ地方では、IT も含め人材育成まで手が回らない事業所が多いのが現状です。今後もそういった事業所のパートナーとして、エンカレッジという社名の通り励まし、勇気づける存在でありたいという思いで活動を行っていきます。

(ITコーディネータ協会 機関誌「架け橋」23号「独立のキーポイント」より)


ITコーディネータ 玉野 聖子

 

株式会社エンカレッジ代表取締役/人材育成支援、企業研修、キャリア形成支援、ITリテラシー向上支援、セミナー企画・運営/ITコーディネータ、えひめ産業振興財団ビジネスアドバイザー、中小企業庁 ミラサポ登録専門家、愛媛県信用保証協会登録専門家、大学非常勤講師、キャリアコンサルタント