レポート: ITCケース研修事務局
(取材日:2021年5月12日)
人との非接触が求められる昨今、ビジネス環境にも大きな変化が起こっています。
DX(デジタルトランスフォーメーション)は今やあらゆる企業における必須の経営課題であり、全国各地域での具体的なDX推進が求められています。
今回は、札幌に拠点を置く戦略経営ネットワーク協同組合の赤羽氏、阿部氏に、北海道におけるITコーディネータによるDX推進やコミュニティ、支援体制などのお取組みについてお話を頂きました。
今回のインタビューは2名の方にオンラインでご参加いただき、お話をいただいております。
※ 左から、赤羽 幸雄 氏(戦略経営ネットワーク協同組合 代表理事)・阿部 裕樹 氏(戦略経営ネットワーク協同組合 理事)
● 本日は、お話をお伺いする機会をいただき、誠にありがとうございます。
最初に戦略経営ネットワーク協同組合様についてご紹介いただけますでしょうか。(ITCケース研修事務局)
「戦略経営ネットワーク協同組合は、国から経営革新等支援機関および官公需適格組合として認定を受けて活動しています。
2003年設立以来、ITコーディネータだけではなく、中小企業診断士、税理士、行政書士、ファイナンシャルプランナーのほか、全国でも珍しいとは思いますがITコーディネータは全員が防災士資格も取得しており、各分野における専門家で構成されています。
当組合は、ITCケース研修実施機関としての活動の他、厚労省が進めているポリテクセンター北海道における生産性向上支援訓練実施機関でもあります。」(赤羽 氏)
● 戦略経営ネットワーク協同組合様では毎年北海道でのケース研修コースを開催頂き、今まで多くの方がITコーディネータ資格を取得されていますが、卒業生であるITコーディネータの方々との連携についてご紹介いただけないでしょうか。(ITCケース研修事務局)
「当組合のケース研修卒業生であるITコーディネータの方との連携活動には次のようなものがあります。
当組合には、日頃いろいろとビジネスに関する問い合わせや相談があるのですが、案件によって組合員で賄いきれないものや、ある分野に特化した専門性を求められるケースもあります。そういった場合は、実際に卒業生の方はじめ、道内のITコーディネータの仲間にお声がけして、一緒に取り組んでいきます。
また、ケース研修受講生の中には、資格取得後に独立したい、あるいは他の会社へ転職したいとお考えの方もいらっしゃいます。こういった場合の相談も個別に受けています。」(赤羽 氏)
「インストラクターとしてITコーディネータを目指す方々と接するなか、日ごろから課題として感じていることですが、ITコーディネータ資格取得後に、この資格を活かし、どのようにビジネスに取り組んでいくかについては決まったスタイルがなく悩んでいる方が多いと思います。
このような課題に対応するためには、ケース研修受講中、ITコーディネータ資格取得後にかかわらず、ITコーディネータとして活動するための必要な情報を定期的に提供することやコミュニケーションの場を作っていくことが重要と考えております。例えば、定期的に勉強会などを通じて相互に交流できる機会を設け、そこで得られた知見や人脈を活かして、実際のビジネスにつなげていく流れを作ることです。
ビジネス指向の方には、単なる人脈作りではなく、実際のビジネスにつながるコミュニティを醸成し、継続していくことも大切だと考えております。
北海道の場合、事業者のIT利活用はまだ進んでいない面もあり、これからのところも多くありますが、この課題解決のキーとなるのは、商工会・商工会議所の経営指導員だと考えております。
ただし、経営指導員がIT経営の価値を理解していないと、企業のIT利活用はなかなか浸透しませんので、今はこの「経営指導員」に対するIT経営に関する連携にも力を入れています。」(阿部 氏)
● ニューノーマル時代に突入し、ITコーディネータとして独立志向をお持ちの方にとって、今後ビジネスに取り組む際の心構えにお聞かせいただけないでしょうか。(ITCケース研修事務局)
「ケース研修の最終日に毎回受講生の方にお話ししていることですが、「自分の得意分野、専門分野を見つけること」が大切です。ITコーディネータとしてオールマイティーな方はいないわけで、今までのご自身の仕事や経験で、自信をもってできる領域を明確化し、自分自身の強みを見極めることが重要です。
言い換えると「自分戦略」をしっかりと組み立てることになります。自分の強み、弱みを明確にし、弱いところや自分に不足していることに関しては、他の、その分野に長けた専門家に任せることで良いのです。互いに補完できる有益なネットワークを作ることは、自分自身の幅を広げることにもつながっていきます。」(赤羽 氏)
● 企業内でこれからITコーディネータ資格取得を目指す方にとって、北海道という場で資格を取り、自社で活動していくことの魅力についてお聞かせいただけないでしょうか。(ITCケース研修事務局)
「まず企業においては、そもそも経営者の方の考えが優先されると感じます。北海道に限らず、企業に所属している従業員にとって資格取得動機やモチベーションの源泉は、やはり経営者の考えが根幹にあると考えています。
道内で地域に根差した事業に取り組んでいる中小企業はたくさんありますが、DX時代に突入する今こそ、経営者自らが、広い視点で「ITを経営の力」とする意識を持ち、変革や自社戦略を実現するためには、牽引する人材の育成が如何に必要であるかを自分事として理解することが前提となります。
経営者の思い、ビジョンや経営方針・戦略がしっかりと全社に伝われば、従業員の意識も変わり、おのずとITコーディネータ資格を取得する目的、意義などの理解も深まり、意識も高まってくると思います。
地道ではありますが、広く道内の経営者と今後も対話を重ね、IT経営の価値やITコーディネータ育成の必要性に関する理解を得ていきたいと考えております。」(赤羽 氏)
● 各地域において、その地場で活動する経営者の声を聴くこと、そして対話が何より大切ですね。
今後、戦略経営ネットワーク協同組合様で取り組んでいきたいとお考えのテーマについてお聞かせいただけないでしょうか。(ITCケース研修事務局)
「北海道は広いこともあって、事業者は、オンラインに関して昔から取り組んでいるところも多く、比較的対応できていますが、支援機関や自治体のほうが遅れている面もあります。このような状況を踏まえ当組合では、生産性向上支援の枠組みの一環で、商工会議所職員のテレワーク活用研修や北海道経済連合会の会員企業の管理職対象のDX研修などに取り組んでいます。
また、北海道以外の地域の組織との「包括的提携協定」を進めており、オンラインを有効活用し、専門家同士のビジネス連携強化に取り組んでいきたいと思います。
今はまさにDXが現実に大きな経営課題となっており、実際に取り組むフェーズに入ってきていると感じます。実際に当組合においても、DX関連案件の相談も数多く受けています。これらのニーズに対応するため、北海道内での「DX経営支援体制の構築」を進めていきたいと考えております。」(赤羽 氏)
「コロナ禍の状況もあってか、今はようやくオンラインでのコミュニケーションが普及し始めた段階と考えています。ただ現状で十分というわけではなく、今後は、オンラインをビジネスにうまく使いこなしていくことが求められ、実用フェーズに進んでいくと考えられます。これに伴い、これからはITコーディネータの活躍するシーンが確実に増えてくるでしょう。
一方で、ベースとなるIT経営の実践に日々取り組んでいないと、テレワークなどの運用もうまく回りませんので、実際には、ツールの活用方法などを含めてトータルでの支援が求められています。今後は、特に道内の中小企業に対して支援していきたいと考えております。」(阿部 氏)
● 今回は貴重なお話を頂き、まことに有難うございます。
最後にITコーディネータ資格取得についてご検討中の方に向けて、メッセージをいただけますでしょうか?(ITCケース研修事務局)
「北海道は広く、昔からの第一次産業が根付いており国内で唯一自給率が200%を超えています。このように北海道は“食”を中心とした産業のサプライチェーンで成り立っているという特徴があります。
それぞれの地域社会の基盤をベースとして、ITコーディネータが中核になり、率先して新たな価値や新しい未来を創っていく必要があります。その実現には、現在はDX経営の推進は不可欠であり、ぜひ、この社会の変革期において、新たな仕組みづくりを目指し、ITコーディネータの方々と一緒に取り組んでいきたいと考えております。
道内では、まだITコーディネータがいない地域もありますが、それぞれの地域において地場のビジネスを牽引するリーダーは必ず必要です。道内においても、更に志を共にする仲間を増やしていきたいですね。
また、ご自身の新しい人生のスタートラインに際して、ITコーディネータ資格をご自身の強い武器として持ち、最大限有効活用して取り組んで頂きたいと希望しております。」(赤羽 氏)
「今後アフターコロナ時代となり、世の中は今よりも更に大きく変わっていくと考えます。
来るべきDX時代に向けて、IT経営推進の必須スキルを身につけ、ぜひITコーディネータとなって頂き、仲間に加わって頂きたいです。ともに新しい未来を創っていきましょう!」(阿部 氏)
<取材後記 (ITCケース研修事務局)>
今回お話を頂いた赤羽氏、阿部氏は、ITコーディネータ資格制度の立ち上げ当初から北海道という地を軸におき、IT経営支援やITコーディネータの育成など多岐にわたり精力的に取り組んで頂いております。
ITコーディネータは資格取得がゴールではなく、言い換えると資格取得は単なるきっかけであり、スタートラインに立ったにすぎません。資格取得後に資格を武器として、如何に実務活動に取り組んでいけるかがキーとなります。今回は、様々なITコーディネータの方々の北海道での活動事例などについてもお話を頂きましたが、それぞれの方が、各種コミュニティや支援体制をうまく活用され、実際のご自身の活動に取り組んでいらっしゃることが印象的でした。
ITコーディネータ資格を取得されたばかりの方、特に今後地域に根差した活動を希望する方にとって、地域コミュニティの存在は大きく、今後の自身の活動においても、重要な道標となることでしょう。
なお、今回は、北海道での活動事例として、戦略経営ネットワーク協同組合様のお取組みについてお伺いしましたが、ITコーディネータ協会届出組織は、北から南に渡る全国各地にあり、それぞれのスタイルや地域特性を活かしたコミュニティ・支援体制を構築しております。
オンライン化の浸透により、ビジネスコミュニケーションにおいては場所の制約は無くなりつつありますが、実際には、地域によって産業構造や地場の企業が抱える課題も違います。今後ご自身が活動の主軸としたい地域での資格取得やコミュニティ参加について、検討してみることも良いでしょう。
一方で共通して言えることは、来るべきDX時代に向けて、全国各地で「ITを経営の力」とすることができる人材が求められています。ITコーディネータはDX推進のための中核となる人材であり、ITコーディネータ資格取得のためのケース研修受講はそのための唯一無二の機会であり、第一歩になります。
現在も人との非接触が求められる状況が続いておりますが、ITコーディネータ資格取得のためのケース研修は現在、オンライン形態での受講も可能です。是非この機会にご受講のご検討をいただければ幸いです。
<今回インタビューにご協力頂いた実施機関の方>
赤羽 幸雄 氏
戦略経営ネットワーク協同組合 代表理事
ケース研修インストラクター
阿部 裕樹 氏
戦略経営ネットワーク協同組合 理事
ケース研修インストラクター
<戦略経営ネットワーク協同組合>
戦略経営ネットワーク協同組合は、ITコーディネータ協会届出組織・ケース研修実施機関であり、認定経営革新等支援機関・官公需適格組合として各種有資格者で構成される。経営コンサルからBCP、ISMS、プライバシーマーク、マイナンバー、情報セキュリティ、各種認証取得支援をサポートしている。